近代ヨーロッパの色彩版画技法に関する研究:イギリスにおけるカラー木口木版の誕生とその展開

芸術学部 基礎教育准教授 大森 弦史


カラー木口木版とは、19世紀ヴィクトリア朝イギリスにおいて主に子供向け絵本の印刷に用いられた版画技法です。版画の歴史のなかでも特殊かつ短命に終わったこの技法について、美術史的観点から多角的に研究します。


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ウォルター・クレイン原画、エドマンド・エヴァンズ彫版、『美女と野獣』より(1874年初版)、カラー木口木版

カラー木口木版は彫版師エドマンド・エヴァンズ(1826-1905)によって実用化された色彩版画技法の一種であり、ジョージ・バクスター(1804-1867)による複合的な色彩版画技法(バクスター法)に改良を加えたものでした。当時のヨーロッパにおける色彩版画の標準はカラーリトグラフであり、版画史上、カラー木口木版はヴィクトリア朝イギリスの子供向け絵本、というごく限られた領域においてのみ興隆したイレギュラーな技法という位置づけがなされています。そのためクレイン、コールデコット、グリーナウェイらの絵本研究こそ盛んですが、その芸術上の特質や意義について美術史学の側からアプローチした研究は未だ充分とはいえません。

そこで本研究では、技法・様式・受容の3つの観点から、当時のイギリスにおいてこの技法がなぜ誕生し、いかに展開したか、同時期に多種多様に考案された色彩版画技法相互の関係性も踏まえながら明らかにしていきます。

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