色に関する研究成果をメディアアート作品によって社会に広く発信できるという点が、本学の大きな特色のひとつである。例えば、第57回科学技術映像祭・内閣総理大臣賞を受賞した「紅」という本学芸術学部の卒業制作作品がある。これは日本古来より口紅や衣装の染色に用いられてきた「紅」の色素を紅花から抽出していく伝統的工程を、化学や光学に基づく科学的根拠や、美しい日本の原風景を織り交ぜて描いた映像作品である。この本学芸術学部映像学科の作品の制作には、本学工学部の生命環境化学科やメディア画像学科が科学的根拠を与えるための実験を実施し協力している。江戸時代の浮世絵の美人画にも見られるとおり、この紅は乾燥すると艶やかな緑色に変化する。この変化のメカニズムや緑色の正体を解明し、「紅」の続編となる映像作品を制作する「教員による工・芸共同研究」が新たにスタートしている。こうした映像作品は本学が所有する専用シアターで公開し社会に発信することができることも本学ならではの強みである。もうひとつ別の例を挙げると、わが国で生成された113番元素が国際的に新元素と認定された時機を捉え、元素周期表の各元素をデザインやマンガによってキャラクター化する「学生による工・芸共同研究」もスタートしている。各キャラクターには、その元素の特性を考慮した色づけがなされ、キャラクターが活躍するマンガ、アニメーション作品の制作や、ゲーム・アプリの開発、厚木商工会議所所属企業とのコラボレーションによる商品開発も視野に入れている。
このように、教員と学生、工学部と芸術学部が一体となった工・芸共同研究の成果を、メディアアートの手段によって情報発信することは、本学ならではの、そして本学にしかできないブランディングの取り組みである。
なお、今後は学長のリーダーシップの下、工・芸共同研究の予算枠を大幅に拡大するとともに、色をテーマとした工・芸共同研究に重点的予算配分を行っていく。また、こうした研究に取り組む博士課程大学院生に対するRA(リサーチアシスタント)制度や奨学金制度を充実させ、大学院の活性化にもつなげる。
「色の国際科学芸術研究センター」では、キャッチフレーズ「色で明日を創る・未来を学ぶ・世界を繋ぐ KOUGEI カラーサイエンス&アート」を掲げ、色の科学の基礎や最先端の研究成果を、写真、映像、拡張現実、プロジェクションマッピング、コンピュータグラフックス、マンガ、ゲーム等のメディアアートの手段を用いてわかりやすく楽しく伝える新たな体験学習型教育システムを構築し、これを子供や中高校生等に一般公開するギャラリーを設ける。あわせて色をテーマとしたメディアアート作品の展示や上映も行う。さらに本学公式ホームページにも「色の国際科学芸術研究センター」の特設サイトを設けるとともに、本学公式ソーシャルネットワーク(Facebook, Twitter, LINE, YouTube)等の手段を用いて積極的な情報発信を行い、「色と言えば東京工芸大学」と言われるようなブランドを構築していく。
本学教員による色に関する公開講座や、他大学や企業の研究者を招いたオープンセミナーを定期的に開催する。また年度末には、各研究プロジェクトの合同研究成果発表会を開催する。さらに、ロチェスター工科大学のマンセル色彩科学研究所、中国文化大学、タイ王立チュラロンコン大学、東フィンランド大学等の、工・芸にわたる色の研究に取り組んでいる海外の大学と連携して、国際ワークショップを開催する。こうした公開講座、オープンセミナー、研究成果発表会、および国際ワークショップは全て一般公開することとし、その開催案内を本学公式ホームページや関連学会のホームページに掲載するとともに、本学公式ソーシャルネットワーク、チラシ、ポスター等の手段によって幅広く社会に告知する。
文化庁は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とした「文化力プロジェクト」を構想している。
同大会を文化の祭典としても成功させ、我が国の文化の魅力を世界に示すとともに、文化芸術を通じて世界に大きく貢献することを目的としている。同構想の戦略のひとつとして、「大学の教員、学生等による企画立案・実施を推進する。(中略)アートと科学技術等との融合による人材育成やイノベーションの創出を促進する」と述べられており、これはまさに本申請事業の趣旨と合致している。この文化力プロジェクトへの参画に向け、本学出展プログラムのコンセプトの立案ならびにメディアアートコンテンツの制作を行う。
また、「文化芸術の国内外への発信」も文化庁の構想の戦略のひとつとして挙げられており、そこには、「日本全国各地の取組を多言語対応のポータルサイトによって国内外に発信できる仕組みを検討する。世界各国の在外公館、在日大使館等や観光庁等の関係省庁と連携し、日本文化の発信を積極的に展開する。」と述べられている。こうした文化庁の情報発信の仕組みを利用して、本申請事業の成果である色をテーマとしたメディアアートコンテンツならびに本学のブランドを国内外に向けて発信する。さらに、本学公式ホームページの「色の国際科学芸術研究センター」の特設サイトには、少なくとも英語と中国語のページも設けて、世界に向けてこれらを発信する。