ベニバナの花の色を集めて作った伝統的な口紅は、薄くつければ鮮やかな赤色に、そして濃く塗れば、光沢を伴う緑色になります。江戸時代に流行し、数々の浮世絵にも描かれている、紅の色の不思議さを解明する研究です。
浮世絵にしばしば見られるように、唇を緑色に光らせる化粧法が江戸時代に流行しました。赤い色素として知られる紅、しかし濃く塗れば、なぜか光沢のある緑色になるという現象は、ドイツの哲学者ゲーテの著書にも記述がみられ、昔から洋の東西を問わず広く知られていました。しかし、今日まで科学的な解明はなされていません。
私たちは芸術学部の映画作品「紅」(べに)の製作を機にベニバナから伝統的な方法で口紅を作る技術を習得しました。そこで、まさに江戸の化粧で使われたものと同じ作り方の紅花色素を材料に、東京工芸大学ナノ科学研究センターの大型の分析機器を動員し、分野の違う複数の工学部教授らとの共同研究で、緑色の輝きの仕組みを多角的に解明したいと考えました。さらに研究成果は、論文で発表するだけではなく、広く一般の人々にも知ってもらうために、短編の科学映画という形でも紹介しようと考えています。