東京工芸大学 学長 義江 龍一郎
東京工芸大学の原点は、1923年(大正12年)に創設された「小西写真専門学校」です。当時の最先端表現技術であった写真に関する技術者・研究者を養成するために創設され、写真技術(テクノロジー)と写真表現(アート)との融合を目指した先駆的な学校でした。現在では工学部と芸術学部の2学部を擁する、極めてユニークな学部構成の総合大学へと発展し、「工・芸融合」を大学の特色としています。
この度、平成28年度私立大学研究ブランディング事業(タイプB【世界展開型】)に採択された本学の事業は、本学のルーツである写真、印刷、光学といった学問分野に根差し、今日の工学部と芸術学部の両学部に共通する全学的な研究テーマとして、「色」を取り上げ、国内の大学では唯一となる「色の国際科学芸術研究拠点」を形成するというものです。特に研究成果を、写真、映像、拡張現実、プロジェクションマッピング、コンピュータグラフィックス、マンガ、ゲーム等のメディアアートの手段によって情報発信することは、本学ならではの、そして本学にしかできないブランディングの取り組みだと思います。「色」のサイエンスをメディアアートの手段で楽しく学ぶことができるギャラリーも公開します。また「色」をテーマとする公開講座や国際ワークショップ、研究成果発表会なども計画しておりますので、多くの方々にご参加いただければ幸いです。
本事業を通じて、「色といえば東京工芸大学」と言われる確固たるブランドを築き、さらなる「工・芸融合」を目指してまいりますので、本学のこれからの取り組みに是非ご期待ください。
色の国際科学芸術研究センター
センター長 野口 靖
「色」は分かっているようで分からないことが多い、不思議な存在です。
私たちは、普段の生活の中では、自身が見えているように世界は存在していると思いがちですが、地球上に降り注いでいる電磁波の中で、人間が色として見ることができるのはその一部でしかありません。例えば、赤外線や紫外線を人間は「見る」ことはできないのです。
しかし、一部の動物はこれらの電磁波を見ることができる種もあり、それらの動物が見る世界は、もしかしたら私たち人間が見る世界よりも芳醇なものかもしれません。
それだけ、「色」を見るということは自明のことのようであって、そのメカニズムについては知られていないことの方が多いといえます。このような色の謎を解き明かし、なおかつその研究成果を新しい表現につなげるためには、従来型の専門性ににこだわらない、学際的な動きが必要になってくるでしょう。
本来、工学と芸術は別個の領域ではなく、互いが相乗効果の中で発展してきたものです。写真、映画、CG、インタラクティブアートなどは、その時代の最新技術無くしては発展しえなかったものです。そして、特に「色」という領域横断的なテーマにおいては、本学の特長である工学部・芸術学部教員の共同研究によって、新技術の開発や新たな表現が生まれることになるでしょう。センター長の役割は、そのような画期的な研究・制作の成果を生み出す環境を提供することだと考えています。
また、これらの成果を積極的に対外的に公開していくことも重要です(アウトリーチ活動)。そのため、本事業では色の体験学習型教育システムの構築と、その成果を一般公開するギャラリー(col.labギャラリー)を設立しました。本ギャラリーで、子供から大人まで「色」の科学的芸術的な面白さや奥深さを体験していただき、来場者の反応を新たな研究につなげるサイクルを確立していきます。
本学の特色を生かした「色」の研究制作を通して、東京工芸大学のブランドが確固たるものになるよう尽力していきます。