2018年度前期カラボギャラリー公開講座
色をめぐるレクチャーシリーズ


 現在、東京工芸大学厚木キャンパスで開催中のカラボギャラリー第2回企画展「色覚を考える」展(2018年4月7日〜8月31日)の関連企画として、人や動物の色覚についてのお話を専門家の方々に伺います。魚類から霊長類まで幅広く色覚の研究をされている河村正二先生、ご自身も色弱という立場から、カラーユニバーサルデザインを提唱している伊賀公一氏、昆虫の色覚研究で著名な蟻川謙太郎先生をお招きして、色覚の謎に迫ります。


開催日程

2018年6月9日(土)
13:00~14:30(1時間半)

霊長類進化の視点から見るヒト色覚多様性の意味

講師:河村正二(東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)

ヒトの色覚には「赤緑色盲」として知られる2色型色覚など、稀とは言えない多様性があります。一方ヒトに近い「旧世界霊長類」のグループは「正常」3色型ばかりで多様性はほとんどありません。ところが、もう少し遠縁の中南米に棲む「新世界ザル」は2色型と3色型の多様性の宝庫です。そして霊長類以外の哺乳類に行くと2色型色覚ばかりになります。さらに遠く鳥類や爬虫類では逆に4色型という想像を絶する色彩感覚の世界があり、魚類に行くと水深や上下角に合わせて色覚型を変えるなどの驚異的柔軟性に出会います。こうした進化の視点からは、ヒトの色覚多様性には意味がある考える根拠が見えてきます。そういったお話をさせていただきます。

2018年6月16日(土)
13:00~14:30(1時間半)

人間の色覚の多様性と多様性に対応した配色 ~カラーユニバーサルデザインの手法と効果~

講師:伊賀 公一(特定非営利活動法人カラーユニバーサルデザイン機構副理事長)

人類の色覚は進化の結果多様性を持つことになった。いつか人間社会は色覚の多様性を忘れ、情報化社会における「色の弱者」を作り出すことになってしまった。このような状況を改善すべく2004年に提唱されたカラーユニバーサルデザインとその波及について多くの事例をあげて講義します。

2018年6月23日(土)
13:00~14:30(1時間半)

チョウに色はみえるか?

講師:蟻川謙太郎(総合研究院大学院大学先導科学研究科教授)

私たちには、眼の網膜に青・緑・赤の3種の色センサー(視細胞)があるおかげで、色が見えています。昆虫の複眼にはどういう視細胞があるのか?アゲハの複眼に細い電極を刺してみると、視細胞には青・緑・赤のほか、紫外・紫・広帯域の計6種が見つかりました。その眼で色が見えるかどうかは、行動実験をとおしてアゲハに直接“聴く”必要があります。単色光を学習させて吸蜜行動を調べた結果、アゲハの色覚は紫外・青・緑・赤の4色性で、しかも識別できる波長の細かさは私たちに優るとも劣らないことが分かりました。アゲハ以外の昆虫での研究も含め、こういう仕事はどう進めているか、その過程が分かるようにお話しします。


公開講座会場

東京工芸大学厚木キャンパス9号館 1 階 915教室
〒243-0297 神奈川県厚木市飯山 1583



*あつぎ協働大学と同じ教室です。